ホーム 《Q122》 電源ノイズを10uV以下に押さえる為の電源出力の対策(ノイズフィルター回路)が在りましたら教えてください
電源のノイズを10μV以下にするのは、不可能というのが正直なところです。
このフィルタをつければ低ノイズ化できますといった単純なもので対策できるのはせいぜい数分の1のレベルであり、それを超える対策は実装やパターンの引き回しがより重要となります。
これについては、ノイズ対策に関する関連書籍を参考にされたほうが良いと思います。
また、以下の方法を参考にして頂ければと思います。
いずれにしても、うまくいけば、実用上差し支えのないレベルまで対策できるかもしれないといった程度だと思います。
まず、電源のノイズですが、電源のノイズというのは、出力電圧にノイズが重畳しているだけではなく、以下の種類のノイズがありますので、これらを全て対策しないと大幅なノイズ低減は難しいと思います。
① コンバータ内部の電流の断続により発生する磁気的なノイズ
② コンバータの入力電流に含まれるノイズ
③ コンバータの出力電圧に含まれるノイズ
④ コンバータの入力から出力を経由してGNDを通って入力に戻るコモンモードノイズ
⑤ コンバータのケースなどをGNDに落とした場合そこに流れる電流ノイズ
まず、①についてですが、コンバータは高速スイッチングを行っていますのでパターンに電流が流れることで周辺に磁束が発生します。
特にコイルやトランスの周辺には強力な磁束が発生します。
磁束の対策には磁気シールドと、思われるかもしれませんが、磁束は空中に容易に漏れますのであまり効果がありません。
まず、第一に、ノイズの小さなコンバータを使用すること、次にコンバータの実装位置を、アナログ回路からできるだけ距離をおくこと(磁気ノイズは距離の2乗に反比例)が重要です。
さらに低減するには、電磁シールドを行います。
電磁シールドは、磁束に対し、渦電流が流れることで磁束と反対方向の磁束を発生させ、磁束の通過を抑えます。
コンバータのケースも磁気シールドの効果はありますが、その外側にもうひとつシールドを設けた方がよりよいと思います。
②については、入力端子に低インピーダンスのコンデンサをつけ、さらには入力ラインにフィルタを挿入されることを推奨します。
③の出力ノイズについても同様にコンデンサとフィルタでノイズを低減できます。
次に④ですがコンバータから発生するコモンモードノイズは、コンバータの1次回路の電圧変化がコンバータ内の絶縁トランスを経由して2次側を通り最終的に1次回路に戻ってゆく高周波電流のループが原因となります。
このノイズが小さなコンバータとは、1次回路の電圧変化が緩やかで、絶縁トランスの1次-2次間容量の小さなものとなります。
このノイズの低減方法としては、コンバータの1次側GNDと2次側GNDの間に1000pFから10000pFくらいのコンデンサを挿入すると、コモンモードの電流の大部分が負荷側に行かずにコンデンサを経由して1次回路に帰っていきますので、ノイズを低減できます。
さらに、負荷へのラインにもコモンモードフィルタを入れることでさらにノイズ低減ができます。
次に⑤のGNDへ流れる電流ノイズですが、静電シールドやバイパスコンデンサなど、ノイズ対策としてGNDに接続する部分には、ノイズ分がそこを通ってGNDへ流れ込んでいます。
この電流のパターンが長いとその周辺に磁束が発生し他の部分に誘導することになりますし、GND電圧も、場所によって電圧が異なりますので、回路によっては共通インピーダンスをを形成することになります。
これらをうまく処理しないと、ノイズ対策が新たなノイズの伝達経路を作ることになります。
コンバータのケースはGNDに落とす場合は、最短距離で入力のGNDに落とすことを勧めますが、落とさない方が好結果が得られる場合が多いと思います。
ノイズ対策としては以上のことを実施する必要があり、最終的なノイズは①~⑤の合計となりますが、対策は①~⑤のそれぞれに対して対策が必要であり、ひとつの対策が、新たなノイズの伝達経路を作ることもあります。
ノイズは電線にノイズ分の電流が流れただけで、周辺の回路に誘導しますので、大幅に減少させるのはかなり難しく1/10程度に低減するのが一般的に可能な範囲ではないかと思います。
当社のBR-LBで3mVp-p、BY-Lで10mVp-p程度(実力はBR-LBと同等の3mVp-p程度)で、これらは出力端に低インピーダンスのコンデンサを入れるだけで1mV程度には比較的容易に対策できると思いますが、その後の対策は前記のものを実施しても0.1mVp-p程度が良いところではないかと思います。(対策方法にもよりますが、①、④のノイズを1/100程度まで落とすのは容易ではありません)
以上が、ノイズ対策となります。