FPGAに供給する電源ラインの電圧は、様々な条件によって所望の設定値から変動します。
◆配線要因
- 電源ラインにぶら下がっている負荷の数
- 負荷の電流量(配線の抵抗値)による、配線での電圧ドロップ
- 負荷急変による配線の動的負荷変動分(配線のインダクタンス成分によるもの)
◆電源要因
- POLコンバータの設定精度と変動分
- 負荷急変によるPOLの動的負荷変動分(電源の応答速度によるもの)
◆ 電源電圧の設定精度(偏差)
POLコンバータの出力電圧は、製造時の部品バラつき等により、設定値から 多少のズレが生じます。
これがPOLコンバータの出力電圧設定偏差です。
◆ 電源電圧の総合変動
POLコンバータの出力電圧の総合変動は、一般的に次の3つから成ります。
- 入力電圧の変化に対する出力電圧変動 : 入力変動(Line Regulation)
- 出力電流の変化に対する出力電圧変動 : 負荷変動(Load Regulation)
- 周囲温度の変化に対する出力電圧変動 : 温度変動(Tempareture Regulation)
これらの電圧変動は、FPGAコア電圧の許容範囲を超える要因になります。
◆ 電源圧の動的変動
※ 消費電流急変時の電源応答特性は、使用するPOLコンバータやデカップリングコンデンサ、配線長等に左右されます。
◆配線要因
- 電源ラインの配線を太くする(抵抗値を可能な限り下げる)
- POLコンバータと負荷(FPGA)の間のハイセを極力短くする(抵抗値、インダクタンス値を極力小さくする)
- 効果的にパスコンを配置する
◆電源要因
- 出力電圧設定精度、及び総合変動の小さいPOLコンバータを選択する
- 負荷過渡応答速度の速いPOLコンバータを選択する
電源の出力電圧は、静的変動 と 動的変動の両方を含めてFPGAコア電圧の推奨動作電圧範囲内である必要があります。 Virtex Ultra Scale の場合、変動分が想定しにくい動的負荷変動等を考慮すると、事前に変動分が想定できるPOL コンバータの出力電圧設定精度は、少なくとも±1%以内に収めておきたいところです。その上で静的な変動分の小さい、 応答速度の速いコンバータを選択し、基板上の配線を太く短くする必要があります。 そうしないと、FPGAが電源に要求する許容電圧範囲±3%以内の実現は難しいと考えられます。
FPGAの供給電源電圧に求められる推奨動作範囲
負荷過渡応答特性は、動的負荷変動、またはトランジェントと呼ばれることもあります。負荷過渡応答速度は、POLコンバータによって異なります。応答速度の遅いPOLコンバータを使用すると、動的負荷変動が大きくなります。
POLコンバータの出力電圧波形
次の2項目で負荷過渡応答時の変動幅が変わります。
① 消費電流の電流変化量(ΔI)
② 電流変化スピード(di/dt)= 電流スルーレート(SR)