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高圧電源のトランスは巻線間結合容量との戦い?

 高圧電源とは1000V位からの電圧を高圧といっていますが、取り扱う技術の違いで100Vも高圧と言う人もおります。この何ボルトから高圧というのかは定義があいまいです。私は3KVまでを中高圧、3KV以上を高圧としています。 高圧電源を作る為には電圧の昇圧方法が最重要になります。昇圧には①トランスによる巻線で昇圧する②コッククロフトによる③インダクタを高周波でスイッチングして昇圧するなどが考えられます。 トランスだけを使った昇圧はシンプルに見えますが、たとえば、2KVの高圧電源を小型化を目指して20KHz程度の高周波スイッチングを用いてトランスだけで2KVを作るのは実際上不可能です。その理由は図1-1を見れば理解できます。トランスというのはコンデンサの固まりなのです。たとえば1次電圧が24Vで2次電圧を2000Vのトランスは巻線比で24V:2000V=24ターン:Xターンとした場合X=2000ターンになります。トランスの2次巻き線を2000ターンも巻くとトランスは多大な線間容量が生じてしまい、図1-1を矩形波でスイッチングドライブしても出力されません。この多大な線間容量トランスのスイッチングはコンデンサをスイッチングしているようになり交流的な「なまった」2次電圧が出てきます。図1-1の巻き線構造では各電線は平行巻き線(次々に線の隣に順次巻かれる)ですから、線と線が平行している部分は容量を生じてコンデンサになってしまいます。 どうしたら解決するのでしょうか?方法はいくつか存在しています。その一例が図1-2です。この写真の高圧トランスはハニカム巻き線をしています。ハニカムとは蜂の巣のように巻き線部が見える為に呼ばれる方法です。 図1-2の巻き線は前記の平行巻きに対して約45°の確度で左右に繰り返し巻きます。巻き線図でも分かるように電線がクロスする部分は「点」であり生じる容量は極めて小さくなるのです。CRTテレビなどの高圧トランスはフライバックトランスで高圧巻き線側は巻き線をいくつかのセクションに分けたボビンの構造で対応しています。 高圧電源回路はこの様なトランスとコッククロフト回路の組み合わせで設計されるのが一般的です。ここではトランスは巻線数が多大だとコンデンサになってしまうほど容量を持つ事を理解してください。

鈴木正太郎